会長挨拶

第11回の日本統合失調症学会を2016年3月25日(金)〜26日(土)に群馬県前橋市で開催いたします。

昨年の第10回大会の糸川昌成・会長の会長講演「脳と心-脳の部品を研究してみて」は、それまでの学会の歩みを映し出す心打つ内容でした。その素晴らしい到達点から出発し、学会がティーンエイジャーへと成長していく10年間に向けた、第一歩となる大会を目指したいと考えています。

大会テーマは、「脳と仲間と人生と」です。研究の対象としての脳、当事者が主体として送り歩む生活と人生、その二つを結ぶ仲間や家族との支え合い、そのすべての視点を統合して統合失調症を考えることができる大会を理想にしています。脳についての基礎研究と、診療のなかでの臨床研究と、人間関係にもとづいた社会的取り組みを、ひとつに統合したい、これがこの大会の第一の目標です。

岡崎祐士・前理事長のリーダーシップのもと、べてるの地元の浦河で開催された第8回大会から、当事者や家族の参加が格段に増えただけでなく、プログラムのなかでの役割がいっそう重要になりました。人生のウェルビーイングをめざす当事者や家族の取組みと、学問として真理を明らかにしようとする研究者の仕事。1つの目標に到るためのこうした2つの道のりを、もう一歩近づけることはできないでしょうか。当事者や家族の経験や知恵と専門職の知識や研究を統合できる大会、それが第二の目標です。

会員のための組織としての学会のあり方には、長い歴史があります。しかし、疾患の名前を挙げた学会には、当事者や家族や支援者のための学会としてのあり方も求められます。そのためには、伝統的な学会のあり方に留まることなく、学会のあり方そのものを発展させることが求められます。学会の新しいあり方のモデルとなることを目指す大会、それが第三の目標です。

こうした3つの目標を掲げた大会に、ぜひご参加ください。学会自身が、みずからの強さに気づいて自信をもち、果たすことのできる役割に充実感を覚え、理想の姿を追い求めていく、そうした「日本統合失調症学会のリカバリー」に向けた取組みを、ぜひ一緒に進めていきましょう。